AI

なぜMicrosoft Copilotだけなのか—ChatGPT・Claudeが社内で使えない理由

「うちの会社、Copilotしか使えない」。大企業で働く人からよく聞く話です。それは本当に多数派なのか、そしてなぜそうなるのか。従業員500名以上の企業・団体に勤務する社会人400名に、主要な生成AIツールごとの社内での扱いを聞きました。

先に結論を書きます。

  • 社内で使える状態にあるのはMicrosoft Copilotが45.5%で最多、次いでChatGPT 37.8%、Gemini 31.3%、Claude 21.3%
  • ただし「禁止」はどのツールも3〜10%と少数。使えない理由の大半は禁止ではなく「未検討」と「わからない」です
  • Claudeは62.8%が「未検討」か「わからない」。禁止されているのではなく、検討の俎上にすら載っていません
  • 会社が許可しているツールと、実際に使われているツールはずれています。ChatGPTは使える状態37.8%に対し利用経験54.5%

1. 社内で公式に使えるAIツールは何か

6つのツールについて、社内での扱いを聞いた結果です(n=400)。

ツール

公式導入・許可

申請すれば使える

禁止

ルールなし各自判断

未検討

わからない

Microsoft Copilot

35.0%

10.5%

3.2%

11.2%

12.0%

28.0%

ChatGPT

25.3%

12.5%

5.0%

12.2%

14.5%

30.5%

Gemini

20.3%

11.0%

7.2%

10.5%

15.2%

35.8%

自社開発・自社専用AI環境

12.8%

6.8%

7.2%

6.0%

25.2%

42.0%

Claude

9.5%

11.8%

9.2%

6.8%

23.0%

39.8%

Perplexity・NotebookLM等

5.8%

8.2%

10.2%

7.8%

24.8%

43.2%

「公式導入・許可」と「申請すれば使える」を合わせた使える状態で並べると、Copilot 45.5%、ChatGPT 37.8%、Gemini 31.3%、Claude 21.3%、自社環境 19.5%、Perplexity等 14.0%。

「わからない」と答えた人を分母から外すと、Copilotの公式導入率は48.6%まで上がります。同じ基準でChatGPT 36.3%、Gemini 31.5%、Claude 15.8%。Copilotが頭ひとつ抜けているという実感は、数字でも裏づけられました。

ただし「Copilotしか使えない」は言い過ぎです。Copilotが使える会社でもChatGPTが使えるケースは多く、問題は特定ツールの独占ではなく、検討されていないツールが多いことにあります。

2. 「禁止」と「未検討」と「ルールなし」は別問題

この調査でいちばん強調したいのはここです。

禁止されているツールは、どれも3〜10%しかありません。 最も高いPerplexity等でも10.2%、Copilotに至っては3.2%です。「セキュリティ上の理由でAIが禁止されている」という語られ方をしますが、実態としての禁止はごく少数です。

代わりに大きいのが、「会社としては未検討・話に出ていない」と「わからない」です。

ツール

未検討+わからない

Perplexity・NotebookLM等

68.0%

自社開発・自社専用AI環境

67.3%

Claude

62.7%

Gemini

51.0%

ChatGPT

45.0%

Microsoft Copilot

40.0%

Claudeは62.7%が未検討か不明。禁止されて使えないのではなく、社内で話題になっていないから使えない状態です。これは「解除してもらう」交渉が成り立たないことを意味します。禁止なら例外申請の余地がありますが、未検討には窓口がありません。

さらに「明確なルールはなく、各自の判断で使われている」がどのツールも6〜12%あります。ここは会社として意思決定していないまま現場で使われている領域で、シャドーAI(会社が許可していないAIの業務利用)の温床になります(シャドーAIの実態は別記事「ガイドラインを『知らない』社員は50.5%—現場で起きているAIセキュリティのギャップ」で扱います)。

3. Microsoft 365の会社とGoogle Workspaceの会社で、使えるAIは違うのか

オフィススイート環境別に、各ツールの「公式導入・許可」率を見ました。

ChatGPT

Claude

Gemini

Copilot

Perplexity等

自社環境

Microsoft 365(n=249)

25.3%

8.4%

16.9%

47.4%

4.4%

13.7%

Google Workspace(n=33・参考値)

30.3%

6.1%

33.3%

9.1%

9.1%

6.1%

両方を併用(n=48)

50.0%

27.1%

50.0%

35.4%

14.6%

27.1%

きれいに分かれました。 Microsoft 365環境ではCopilotが47.4%、Gemini 16.9%。Google Workspace環境ではGemini 33.3%、Copilot 9.1%。既存のオフィススイートに紐づくAIがそのまま採用されています。

Google Workspaceのサンプルは33名と少なく参考値ですが、傾向ははっきりしています。AIツールの選定は、AIツールとしての性能比較ではなく、すでに契約しているスイートの延長で決まっているということです。

最も目を引くのは「両方を併用」の層です。ChatGPT 50.0%、Gemini 50.0%、Claude 27.1%、自社環境 27.1%と、全項目で最も許可率が高い。スイートを2つ併用できる組織は、AIツールについても複数を並行して評価できる体制がある、と読めます。ここは因果の向きが特定できないので、「そういう組織にはそういう傾向がある」という以上のことは言えません。

4. 会社が使える状態にしているツールと、社員が実際に使うツールのズレ

仕事で使っている(使ったことがある)ツールを聞いた結果と、会社が使える状態にしている割合を並べます。

ツール

使える状態

利用経験

差

ChatGPT

37.8%

54.5%

+16.8pt

Gemini

31.3%

39.3%

+8.0pt

Microsoft Copilot

45.5%

38.5%

−7.0pt

Claude

21.3%

9.8%

−11.5pt

ChatGPTは使える状態より利用経験が16.8pt多い。Geminiも8.0pt上回ります。一方、CopilotとClaudeは使える状態のほうが多い。

この差の読み方はひとつではありません。会社が把握していない利用(いわゆるシャドーAI)もあれば、回答者が会社のルールを正確に知らない可能性もあります。ただ、ChatGPTとGeminiという個人でも使いやすいツールで利用経験が使える状態を上回り、法人契約が前提のCopilotで逆になるという並びは、前者の解釈と整合的です。

Claudeの−11.5ptは別の構図です。会社が使える状態にしていても、実際には使われていない。認知度や習熟の問題で、使える状態と利用経験のあいだに開きが生じている可能性があります。

なお、仕事で生成AIを一切使っていない人は18.5%。1人あたりの平均利用ツール数は1.71個で、複数ツールを使い分けている人はまだ多数派ではありません。

5. AIツールが社内で使えない理由

「会社で使えない生成AIツールについて、その理由としてあてはまるもの」を聞きました。

理由

割合

情報漏洩・入力データの学習利用への不安

30.8%

(理由はわからない)

29.3%

すでに会社が導入しているツールがあり、必要性が薄い

24.3%

セキュリティ審査を通せない・通っていない

24.0%

コスト・ライセンス費用

17.5%

法務・コンプライアンス部門の懸念

12.0%

社内に性能や安全性を評価できる人がいない

7.5%

稟議・承認プロセスが重い

7.2%

業界規制や顧客との契約上の制約

6.5%

経営層の関心が低い

4.8%

海外事業者へのデータ提供が認められない

3.8%

(使えないツールは特にない)

6.5%

1位は情報漏洩への不安が30.8%。ここは想定どおりです。

注目したいのは3位の「すでに会社が導入しているツールがあり、必要性が薄い」24.3%。これはセキュリティの話ではなく、先に入ったツールが後発を締め出しているという話です。Copilotが先に入った組織で、あとからChatGPTやClaudeを追加する理由を説明しづらい。セキュリティ審査24.0%とほぼ同じ水準でこの理由が挙がることは、ツール選定の実務にとって示唆的です。

そして「理由はわからない」が29.3%で2位。使えない理由が現場に説明されていません。前節で見た「未検討」の多さと合わせると、多くの企業でAIツールの選定は、明示的な判断としてではなく、誰も検討しないまま既定路線として決まっているという姿が浮かびます。

「経営層の関心が低い」が4.8%と最下位近くであることも付け加えておきます。経営が止めているわけではないのです。

6. まとめ:使えないのは、禁じられているからではない

この調査から言えることは3つです。

第一に、禁止は少数です。 どのツールも禁止は3〜10%。AI活用が進まない理由を「セキュリティ部門が厳しいから」に求めるのは、実態と合いません。

第二に、本当の障壁は未検討です。 Claudeで62.7%、Perplexity等で68.0%が未検討か不明。禁止されているなら交渉できますが、検討されていないものは交渉の対象にすらなりません。ツールを増やしたい現場がまずやるべきは、解除の申請ではなく、検討の議題に載せることです。

第三に、選定はスイートの延長で決まっています。 Microsoft 365ならCopilot、Google WorkspaceならGemini。ツール単体の性能比較で選ばれているわけではありません。既存環境と無関係なツールを導入したい場合は、この力学を理解した提案が必要です。

調査概要

  • 調査名:企業のAIセキュリティ・ガバナンス実態調査(2026年9月)
  • 調査主体:株式会社データインサイト
  • 調査方法:インターネット調査(ユニーリサーチ)
  • 調査対象:従業員500名以上の企業・団体に勤務する社会人(経営者・役員/会社員/公務員)
  • 有効回答数:400名(スクリーニング回答1,042名、通過率38.4%)
  • 調査実施日:2026年9月26日
  • 割付:なし(自然回収・ウェイトバックなし)

回答者の属性内訳は「大企業のAI利用ガイドライン策定率は56.8%—AIセキュリティ対応の現在地」に記載しています。各セルはn≧30を断定の目安とし、これを下回るものは参考値として表記しています。Google Workspace環境のn=33は参考値です。構成比は小数第2位を四捨五入しているため、内訳の合計が100%にならない場合があります。

本文中の企業・会社に関する割合は、回答者が自身の勤務先について答えた結果を集計したもの(回答者ベース)です。同じ企業に勤める回答者が複数含まれる場合があります。

出典:データインサイト調べ

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