就活でAIを使う学生の54.5%が「人には言っていない」——学生生活とAIの距離
授業から就職活動、そして人間関係まで。生成AIは学生生活のどこまで入り込んでいるのでしょうか。データインサイトは2026年7月、大学生・大学院生300人を対象に、場面ごとの利用実態と依存度を調査しました。
この記事の要点
- 就活でAIを使っていると答えた学生(134人)のうち、54.5%が「周囲に言っていない」。オープンにしているのは45.5%
- 工程別に見ると、就職活動で何らかの形でAIを使っている学生は86.2%。最多の用途はエントリーシート作成の45.3%
- 場面別の利用率は授業の課題で89.0%が最高。一方「AIがないと成り立たない」は44.0%にとどまる
- 全場面で利用率と依存度に45〜62ポイントの開きがある
- 誰にも聞けない悩みを最初に打ち明ける相手がAIという学生は19.0%。友人(21.3%)に迫る
1. 授業の課題89.0%が最高——学生がAIを使う場面ランキング
7つの場面それぞれについて利用実態を尋ねました。分母は各場面を「自分には当てはまらない」と答えた人を除いた人数です(利用者252人ベース)。
場面 | 分母 | 利用率 |
|---|---|---|
授業の課題・レポート | 245 | 89.0% |
卒論・研究 | 203 | 82.8% |
日常の調べ物・生活 | 239 | 82.8% |
就職活動 | 201 | 81.6% |
試験勉強 | 237 | 78.1% |
恋愛・人間関係や悩みごと | 208 | 65.4% |
サークル・部活動 | 162 | 56.8% |
学業に関わる場面が上位を占めますが、注目すべきは下位です。恋愛・人間関係や悩みごとでも65.4%、サークル・部活動でも56.8%が使っています。学業の道具として入ってきたAIが、すでに私生活の領域まで届いていることがわかります。
なお、この設問では「そもそもこの場面がない」という選択肢を設けました。卒論・研究では49人(19.4%)、就職活動では51人(20.2%)、サークル・部活動では90人(35.7%)が該当します。これらを分母に含めると利用率が実態より低く出るため、除外して算出しています。
2. 「AIがないと成り立たない」は最高でも44.0%
では、どこまで依存しているのか。「AIがないと成り立たない」と感じる場面を複数回答で尋ねました(分母=利用者252人)。
場面 | 「成り立たない」 |
|---|---|
授業の課題・レポート | 44.0% |
卒論・研究 | 23.8% |
試験勉強 | 22.2% |
就職活動 | 21.8% |
日常の調べ物・生活 | 20.6% |
恋愛・人間関係や悩みごと | 13.1% |
サークル・部活動 | 3.6% |
あてはまるものはない | 22.6% |
最も高い授業の課題・レポートでも44.0%。「あてはまるものはない」と答えた学生も22.6%います。
利用率と並べると、その差は歴然です。
場面 | 利用率 | 「成り立たない」 | 差 |
|---|---|---|---|
日常の調べ物・生活 | 82.8% | 20.6% | 62.2pt |
就職活動 | 81.6% | 21.8% | 59.8pt |
卒論・研究 | 82.8% | 23.8% | 59.0pt |
試験勉強 | 78.1% | 22.2% | 55.9pt |
サークル・部活動 | 56.8% | 3.6% | 53.2pt |
恋愛・人間関係や悩みごと | 65.4% | 13.1% | 52.3pt |
授業の課題・レポート | 89.0% | 44.0% | 45.0pt |
全場面で45〜62ポイントの開きがあります。使ってはいるが、なくても困らない。これが現在の学生とAIの関係です。
依存が最も進んでいるのは授業の課題・レポート(差45.0pt)で、逆に日常の調べ物は最も差が大きい(62.2pt)。手放せなくなりつつあるのは、評価がかかる場面からだと読めます。
3. 何もしていない学生の利用率は37.1%——活動によって使い方は違うか
前回の記事では、就職活動中の学生の利用率が100%だったことを紹介しました。取り組んでいる活動別に見ると、生成AIの利用率には大きな開きがあります。
活動 | n | 利用率 |
|---|---|---|
就職活動 | 61 | 100% |
研究室・ゼミの活動 | 88 | 97.7% |
アルバイト | 155 | 97.4% |
サークル活動 | 72 | 97.2% |
体育会・運動部の活動 | 33 | 90.9% |
いずれも取り組んでいない | 62 | 37.1% |
いずれの活動にも取り組んでいない学生の利用率は37.1%。それ以外の活動をしている学生とは53.8〜62.9ポイントの差があります(体育会53.8pt、サークル60.1pt、アルバイト60.3pt、研究室・ゼミ60.6pt、就職活動62.9pt)。専攻別(68.8〜89.3%)や学年群別(82.8〜90.6%)の差が20ポイント程度なのに対し、活動の有無による差は50ポイントを超えます。生成AIを使うかどうかを最も大きく分けているのは、やるべきことがあるかどうかだと言えます。
裏を返せば、学生にとってAIは「何かに追われているときに手を伸ばす道具」だということです。課題も就活もアルバイトもない状態では、そもそも使う必要が生まれません。
4. 就活でAIを使う学生は86.2%、最多はES作成
就職活動でのAI利用を、工程ごとに尋ねました(分母=就活経験者181人)。
就活での用途 | 割合 |
|---|---|
エントリーシート(ES)の作成 | 45.3% |
自己分析 | 42.5% |
面接の想定問答・練習 | 33.7% |
業界・企業研究 | 28.7% |
OB・OG訪問や企業とのメール文面の作成 | 19.9% |
Webテスト・適性検査の対策 | 17.1% |
就活ではAIを使っていない | 13.8% |
何らかの工程でAIを使っている学生は86.2%にのぼります。最も多いのはエントリーシートの作成45.3%で、自己分析42.5%が僅差で続きます。
ここで注目したいのは、上位2つが「企業に提出する文書」と「自分自身を語る作業」だという点です。面接の練習(33.7%)や業界研究(28.7%)のような下調べ・訓練よりも、成果物そのものと自己理解にAIが入り込んでいます。
学年群別に見ると、高学年(学部3〜4年・5年以上)の89.9%が就活でAIを使っています。低学年は67.6%と低めですが、これは就活が本格化していない段階の回答を含むためと考えられます。
5. 就活AI利用者の54.5%が「人には言っていない」
そして今回の調査で最も示唆的な数字がこれです。「就活でAIを使っている」と答えた学生に、そのことを周囲に話しているかを尋ねました(分母134人)。
周囲への態度 | 割合 |
|---|---|
使っているが、あまり人には言っていない | 54.5% |
周囲にオープンにしている | 45.5% |
過半数が、AIを使っていることを公言していません。
前章の86.2%は工程別に「使った」を1つでも選んだ人の割合で、この134人とは設問が異なります(詳細は末尾の注記をご覧ください)。ただ、どちらの数え方でも共通しているのは、使うことは常識になりつつあるのに、それを公言することにはまだ抵抗があるという点です。今回の調査では情報の入手経路までは尋ねていませんが、この状態では学生同士で使い方のノウハウが共有されにくく、それぞれが手探りで使い続けるという構図になりやすいはずです。
企業側から見れば、目の前の学生のESや面接回答にAIがどの程度関与しているかは、本人に聞いても正確には分からない可能性が高い、ということでもあります。
6. 悩みを最初に打ち明ける相手がAIの学生は19.0%
最後に、生成AIと関係のない形で尋ねた設問を紹介します。「誰にも聞けないような悩みができたとき、最初に打ち明ける相手は誰か」(分母=全員300人)。
最初に打ち明ける相手 | 割合 |
|---|---|
誰にも相談しない | 26.3% |
家族 | 23.3% |
友人 | 21.3% |
AI(ChatGPTなど) | 19.0% |
恋人 | 6.7% |
SNS・匿名掲示板 | 3.3% |
AIが19.0%で4位につけ、友人(21.3%)にわずか2.3ポイント差まで迫っています。恋人(6.7%)やSNS(3.3%)は大きく下回りました。
利用頻度別に見ると差は明確です。ほぼ毎日使う層では28.2%、週に数回の層では23.6%がAIを選ぶのに対し、生成AIを使っていない学生では2.1%にとどまります。AIを日常的に使うことと、それを相談相手にすることは連動しています。
ただし最も多い回答は「誰にも相談しない」26.3%であることも見落とせません。AIは、これまで相談相手がいなかった学生の受け皿になっている面もあれば、人に相談する機会を代替している面もあるでしょう。今回の設問では、そのどちらであるかまでは判別できません。
7. まとめ:AIは学生生活のインフラになったか
広く使われているが、まだ不可欠ではない。 利用率は最高89.0%に達する一方、「なくては成り立たない」は44.0%が上限。全場面で45〜62ポイントの開きがあります。インフラになりつつある、というのが正確な表現です。
深く入り込んでいるのは就活。 86.2%が使い、ES作成45.3%・自己分析42.5%と、成果物と自己理解の中枢にまで届いています。
しかし語られていない。 就活でAIを使っている学生(134人)の54.5%が沈黙しています。使用が常識化する速度に、それを話せる空気が追いついていません。
私生活にも届いている。 悩みを最初に打ち明ける相手としてAIを選ぶ学生が19.0%。友人に迫る水準です。
数年後、この学生たちが社会に出ます。次回は、彼らの使い方と、すでに企業で働く社会人の使い方を突き合わせます。
調査概要
- 調査名:学生のAI利用実態調査(2026年7月)
- 調査対象:全国の大学生・大学院生
- 有効回答数:300人(大学生258人/大学院生42人)
- 年齢:18〜34歳(平均21.8歳)
- 調査方法:インターネット調査(ユニーリサーチにて配信)
- 実施主体:株式会社データインサイト(自社調査)
- 回収方式:自然回収。割付・ウェイトバックは行っていません
回収サンプルの属性分布
- 専攻:文系49.7%/理系25.7%/医歯薬・看護・保健系14.0%/その他10.7%
- 学年:学部1年12.7%/2年15.7%/3年22.0%/4年30.7%/5年以上5.3%/修士1年4.3%/修士2年6.3%/博士1.3%/その他1.7%
- 大学:難関国立大学11.0%/早慶上理5.7%/MARCH・関関同立12.7%/その他の国公立16.0%/その他の私立44.0%/答えたくない10.7%
- 現在取り組んでいる活動(複数回答):アルバイト51.7%/研究室・ゼミ29.3%/サークル24.0%/就職活動20.3%/体育会・運動部11.0%/長期インターン5.0%/いずれもない20.7%
集計上の注記
- 場面別の利用実態・依存度の設問は、生成AIの利用者252人を分母としています。悩みの相談相手の設問は全300人が分母です。
- 場面別の利用率は、各場面について「そもそもこの場面がない(自分には当てはまらない)」と答えた人を分母から除外して算出しています。除外した人数は、サークル・部活動90人、就職活動51人、卒論・研究49人、恋愛・人間関係や悩みごと44人、試験勉強15人、日常の調べ物13人、授業の課題7人です。
- 就職活動の設問は、生成AIの利用者252人のうち「就職活動はまだしていない・する予定がない」と答えた人を除いた181人を分母としています(全300人ベースではありません)。
- 86.2%と54.5%は分母が異なります。 86.2%は工程別の複数回答設問(181人中、「就活ではAIを使っていない」25人を除く156人)、54.5%は周囲への態度を尋ねた単一回答設問(181人から「就活ではAIを使っていない」32人と「就職活動はまだしていない」15人を除いた134人)に基づきます。同じ181人を分母としながら「使っている」人数が156人と134人の2通り出るのは、2つの設問で回答が食い違った人が32人(181人中17.7%)いるためです。内訳は、工程を選びながら態度設問では「使っていない」等と答えた人が27人、その逆が5人で、差し引き22人分のズレになります。今回は分岐(スキップ設定)が入らないまま配信されたことが背景にあると考えられます。「86.2%のうちの54.5%」という読み方はできません。
- 学年群別の集計では「その他(研究生・科目等履修生など)」5人を対象外としています(この5人は全員が生成AIの非利用者のため、就活分母181人には含まれていません)。院生の就活利用(n=25)は回答者数が少ないため本文では扱っていません。
- 体育会・運動部(n=33)、長期インターンシップ(n=15)は回答者数が少なく、後者は本文では扱っていません。
- 「恋愛・人間関係や悩みごと」は、調査実施時に「恋愛・人間関係」と「悩みごと・メンタル」を統合した1項目として尋ねています。
採用・教育に関わる方へ
データインサイトは、AI Transformation(AX)を専門とするコンサルティングファームです。本調査のように独自の一次データを取得・分析しながら、企業の生成AI活用を設計から定着まで支援しています。
就活経験のある学生の86.2%が、何らかの工程でAIを使っています。そして「使っている」と答えた学生の半数以上は、そのことを周囲に語っていません。この前提のうえで採用プロセスや育成を設計し直したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
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