大企業のAI、チャット止まりが32.8%――エージェント活用まで到達は13.3%【大企業AI活用実態調査】
生成AIを導入した大企業のうち、その使い方が「チャットで質問・相談する」段階にとどまっている割合は32.8%にのぼる。一方で、AIエージェントや開発・コーディングといった一歩進んだ活用に到達している企業は13.3%。多くの企業が「AIは入れたが、チャットの域を出ていない」構図がうかがえる。
データインサイトが従業員1,000名以上の企業・団体に勤める社会人460人に実施した独自調査(2026年6月)と、同じ大企業層400人を対象にしたAIエージェント追加調査(別サンプル)の結果から、「AI活用の深さ」の実像を読み解く。
■ この記事のポイント
- 大企業のAI活用レベルは「チャット中心」が32.8%で最多。「業務フローへの組み込み」以上に進んでいるのは36.7%にとどまる。
- 「AIエージェント活用」8.3%と「開発・コーディング」5.0%を合わせた高度活用層は13.3%。多くはまだチャット段階にある。
- 「AIエージェント」という言葉の認知率は82.5%と高い一方、人に説明できるレベルで理解している人は19.5%(別調査による参考比較・n=400)。
- AIエージェントを個人・会社のいずれかで利用している割合は55.5%。ただし認知82.5%に対し利用55.5%という「知っているが使っていない」ギャップや、個人利用34.5%・会社導入44.2%という乖離も浮かび上がった。
- 活用が浅い企業に共通するのは「人材・スキル不足」35.4%、「セキュリティ不安」28.3%、「知識不足」26.5%といった要因。
■ 1. AI活用には「深さ」の段階がある
「AIを使っている」と一口に言っても、その中身は一様ではない。チャット画面で質問や相談をするだけの使い方と、業務フローに組み込んで自動化する使い方、さらにAIエージェントに一連の作業を任せる使い方とでは、得られる成果はまったく異なる。
本調査では、AIの活用レベルを「チャット中心」「業務フローへの組み込み」「AIエージェント活用」「開発・コーディング」「ほとんど活用なし」といった段階でとらえた。導入して満足するのではなく、「どの深さまで到達しているか」を見ることで、成果に伸び悩む理由が見えてくる。
■ 2. 大企業の大半はどの段階にいるか
AIの活用レベルを尋ねた設問(Q12)では、次のような分布となった。

最も多いのは「チャット中心」の32.8%で、AIを使ってはいるものの、対話的に質問・相談する段階にとどまっている層が3分の1を占める。
これを活用レベルの段階ごとでまとめると、「業務フローへの組み込み」以上(=チャットの先へ進んでいる層)は36.7%。そのうち「AIエージェント活用」と「開発・コーディング」を合わせた高度活用層は13.3%にとどまる。裏を返せば、AIを導入している企業の多くが、まだチャットの域を出ていないことがうかがえる。

規模別に見ると、「AIエージェント活用」の割合は5,000名以上で11.9%、1,000〜4,999名で4.1%と差がある。より大規模な企業ほど、エージェント段階に踏み込んでいる傾向が見える。一方で「業務フローへの組み込み」は5,000名以上20.2%、1,000〜4,999名27.2%と、必ずしも大規模企業が先行しているわけではない点も興味深い。
■ 3. AIエージェントはどこまで知られ、使われているか

「AIエージェント」という言葉自体の浸透度はどうか。本体調査(Q13)では、AIエージェントを「日常的に利用している」が20.9%、「試したことがある」が22.2%、「名前は聞いたことがある程度」が30.0%、「よく知らない」が27.0%だった。日常的に使う層は2割にとどまり、「名前は知っているが使っていない」層が3割を占める。規模別では「日常的に利用」は5,000名以上20.2%、1,000〜4,999名21.7%とほぼ差がなかった。

同じ大企業層を対象にした別のAIエージェント追加調査(n=400・別サンプルによる参考比較)では、より詳しい認知・利用の実態が見えた。「AIエージェント」という言葉の認知率(聞いたことがある程度以上)は82.5%と高い。しかし、人に説明できるレベルで理解している人は19.5%にとどまり、「全く知らない」も17.5%残る。言葉としては広く知られつつあるが、中身の理解は道半ばであることがうかがえる。
利用実態では、AIエージェントを個人で使っている人が34.5%、会社として導入しているケースが44.2%、いずれかで利用している人は合わせて55.5%。半数強が何らかの形で触れている一方、44.5%はまだ未利用だった。
■ 4. どの部署・役職が高度に使っているか
AIエージェントの認知・利用は、役職や部署によって濃淡がある。以下は追加調査(n=400・別サンプルによる参考比較)の集計で、各セルのnが小さい層(n<30)は参考値・傾向として扱う。
■ 役職別(AIエージェント)

※n<30のため参考値(傾向)
役職が上がるほど認知率・利用率がおおむね高まる傾向が見える。部門長・マネージャー層(n=117)では認知率92.3%、いずれか利用率72.6%と高い一方、一般社員(n=126)は認知率76.2%、いずれか利用率39.7%と差が開く。経営層・事業部長層はサンプルが小さく(n=9・22)参考値だが、いずれも高い水準を示す傾向がうかがえる。
■ 部署別(AIエージェント)
- ・経営企画(n=36):認知率94.4% / 個人利用61.1% / いずれか利用75.0%
- ・研究開発(n=34):認知率94.1% / 個人利用50.0% / いずれか利用88.2%
- 情シス・DX(n=32):認知率90.6% / 個人利用46.9% / いずれか利用68.8%
- 経理・財務(n=25※):認知率88.0% / 個人利用40.0% / いずれか利用56.0%
- 製造・生産(n=55):認知率83.6% / 個人利用29.1% / いずれか利用52.7%
- 人事・総務・法務(n=56):認知率82.1% / 個人利用44.6% / いずれか利用55.4%
- 営業(n=74):認知率79.7% / 個人利用32.4% / いずれか利用51.4%
- カスタマーサポート(n=14※):認知率71.4% / 個人利用14.3% / いずれか利用21.4%
- マーケ・広報(n=10※):認知率70.0% / 個人利用60.0% / いずれか利用60.0%
- その他(n=64):認知率70.3% / 個人利用15.6% / いずれか利用34.4%
※n<30のため参考値(傾向)
n≥30の部署で見ると、経営企画・研究開発・情シスDXといった企画系・技術系の部署で認知率・利用率が高い傾向がうかがえる。とくに研究開発(n=34)は「いずれか利用率」が88.2%と高い。一方、営業(n=74)や製造・生産(n=55)は認知率こそ8割前後あるものの、いずれか利用率は5割前後にとどまる。マーケ・広報や経理・財務、カスタマーサポートはサンプルが小さいため参考値として扱う。
■ 5. 活用が浅い企業に共通する要因
チャット段階から先に進めない、あるいはAI活用が浅いままの背景には何があるのか。本体調査でAI活用が進まない阻害要因を尋ねた設問(Q14・複数回答/n=460)では、次の要因が上位に挙がった。
- 活用できる人材・スキルの不足:35.4%
- セキュリティ・情報漏えいへの不安:28.3%
- 活用の知識・ノウハウ不足:26.5%
- 使うアイデアが浮かばない:19.8%
- 業務プロセスが複雑で組み込めない:11.1%
- 組織文化・風土:9.3%
- 推進を主導する人材の不在:8.7%
- 経営層の方針が曖昧:5.9%
- 特に課題はない:20.9%
最も多いのは「人材・スキル不足」35.4%で、次いで「セキュリティ不安」28.3%、「知識・ノウハウ不足」26.5%が続く。「使うアイデアが浮かばない」も19.8%あり、ツールを導入しても、それを深く使いこなす人材・知識・発想が追いついていない状況がうかがえる。技術そのものより、使い手側の要因が上位を占めている点が特徴的だ。
■ 6. (補足)「知っているが使っていない」ギャップと、個人利用・会社導入のずれ
ここまでの数字を重ねると、AIエージェントをめぐる二重のギャップが浮かび上がる。
一つは「知っているが使っていない」ギャップ。追加調査(n=400・別サンプルによる参考比較)では、認知率82.5%に対し、いずれか利用率は55.5%。言葉は知られていても、実際に使う段階までは3割弱の開きがある。
もう一つは、個人利用と会社導入のずれ。同調査で、AIエージェントの個人利用率は34.5%に対し、会社導入率は44.2%と、会社としての導入がやや先行する一方、個人の日常利用がそこまで追いついていない。制度としては入りつつあっても、一人ひとりの実利用に結びつききっていない状態が、活用の深さが伸び悩む一因になっている可能性がある。
■ 7. まとめ:チャットの次に進むには
今回の調査からは、大企業のAI活用が「チャット中心」32.8%を最多とし、エージェントや開発・コーディングといった高度活用に到達しているのは13.3%という構図が見えた。導入率が高まる一方で、多くの企業が「使ってはいるが浅い」段階にとどまっている。
その先へ進む鍵は、ツールの追加導入そのものよりも、阻害要因の上位に並んだ「人材・スキル」「知識・ノウハウ」「使うアイデア」といった、使い手側の底上げにあることがうかがえる。「知っているが使っていない」ギャップや、個人利用と会社導入のずれを埋め、チャットの次の一歩――業務フローへの組み込みやエージェント活用――へどう橋渡しするかが、これからの論点になりそうだ。
■ チャットの次の一歩を考える
「AIは入れたが、チャット止まりから先へ進めない」――今回の調査は、多くの大企業が抱えるこの課題を数字で示しました。データインサイトでは、AI活用の現在地の可視化から、業務フローへの組み込み・AIエージェント活用の設計・定着支援まで、「チャットの次の一歩」を伴走してご支援しています。自社の活用がどの段階にあるかの整理からでも、お気軽にご相談ください。
■ 調査概要
・調査名:大企業AI浸透・活用実態調査(2026年6月)/AIエージェント高度活用に関する追加調査
・調査主体:株式会社データインサイト(ユニーリサーチ配信・データインサイト調べ)
・対象:従業員1,000名以上の企業・団体に勤める社会人
・回収方式:自然回収(割付・ウェイトバックなし)
・本体調査:有効回答460人(5,000名以上243人/1,000〜4,999名217人)、実施時期2026年6月
・追加調査:有効回答400人(5,000名以上213人/1,000〜4,999名187人)、実施時期2026年6月(同月に別配信)。本体調査とは別配信・別サンプルであり、個人単位での結合はできない。本文で両調査を並べた箇所は「別調査による参考比較」として記載している。
・回収サンプルの属性分布(本体調査n=460)
・役職:部門長・マネージャー30.7%/一般社員32.6%/リーダー・主任20.7%/契約・派遣8.5%/事業部長・本部長5.0%/経営層・役員2.6%
・部署:営業22.6%/その他17.6%/製造・生産12.4%/情シス・DX9.8%/人事・総務・法務9.1%/研究開発8.3%/経理・財務6.5%/経営企画6.1%/カスタマーサポート5.0%/マーケ・広報2.6%
・注記:本文中で各セルのサンプルが30件未満(n<30)の層は「傾向」「参考値」として扱い、断定を避けている。数値は小数第2位を四捨五入しているため、内訳の合計が100%にならない場合がある。複数回答(MA)の設問は回答者数を分母とした選択率のため、合計が100%を超えることがある。
