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学生は自分で選び、社会人は会社に選ばされる——AI利用の世代ギャップ

数年後、生成AIを日常的に使いこなす学生が企業に入ってきます。彼らの使い方と、いま企業で働く社会人の使い方は、どれだけ違うのか。データインサイトが2026年7月に実施した大学生300人調査と、2026年6月に実施した大企業勤務者460人調査を突き合わせました。

この記事の要点

  • 学生(利用者ベース)のGemini利用率は61.5%、社会人は39.3%。学生はツールを自分で選んでいる
  • 社会人の36.3%が「会社指定以外のツールは導入できない」。自由に導入できるのは9.6%
  • 学生の64.7%は最初に使ったツールから変えていない。性能や評判をきっかけに乗り換えた経験は21.1%
  • 学生はレポートを「自分で書いてAIに仕上げさせる」48.3%、社会人の理想は「AIに土台を作らせる」48.9%
  • 大学は制限56.0%・支援18.0%、会社は公式導入43.9%。統制の形が違う

※本記事は別配信・別サンプルの2調査を並べた参考比較です。詳細は末尾の注記をご覧ください。

1. 学生のGeminiは61.5%、社会人は39.3%——使うAIはどう違うか

まずツールの分布です。学生側は生成AI利用者252人、社会人側は全回答者460人が分母で、分母の取り方が異なる点にご注意ください。

ツール

学生(2026年7月)

社会人(2026年6月)

ChatGPT

82.9%

57.4%

Gemini

61.5%

39.3%

Microsoft Copilot

21.0%

35.7%

Claude

13.9%

6.1%

ChatGPTが首位である点は共通です。差が出るのは2位以下でした。

学生はGeminiが61.5%と6割を超えるのに対し、社会人は39.3%。逆にMicrosoft Copilotは社会人35.7%に対し学生21.0%と、関係が逆転しています。

この違いは好みというより、環境の違いを反映していると考えられます。社会人の58.3%はMicrosoft 365環境で働いており、Copilotは業務環境に組み込まれた形で届きます。一方で学生には、そうした前提がありません。

2. 自由に導入できる社会人は9.6%——学生は自分で選び、社会人は会社に選ばされる

ツールを誰が選んでいるのか。この点で両者は決定的に違います。

社会人に「個人が自分の判断で新しい生成AIツールを業務に導入できるか」を尋ねた結果です。

社会人の状況

割合

会社が指定したツール以外は導入できない

36.3%

わからない

20.0%

申請・承認すれば導入できる

20.2%

一切認められていない

13.9%

自由に導入できる

9.6%

自由に導入できるのは9.6%。「指定以外は不可」36.3%と「一切不可」13.9%を合わせた50.2%が、実質的に選択権を持っていません。

対して学生には、そもそも指定するものがありません。料金プランの内訳がそれを示しています。学生の72.6%は無料プランのみで使い、自分で課金しているのは10.3%。大学が提供する有料アカウントを使っているのは、わずか6.3%です。

社会人は会社が選んだツールを使い、学生は自分で見つけたツールを使っている。 ツール分布の違いは、この構造の違いから生まれています。

3. 学生48.3%と社会人48.9%が正反対——委任度の世代差

文書作成をどこまでAIに任せるか。学生には実際の作り方を、社会人には理想の形を尋ねました(設問の位相が異なる点は後述します)。

委任のかたち

学生(実態)

社会人(理想)

ほぼすべてAIに任せる

3.3%

12.8%

AIに土台を作らせ、仕上げは自分

26.9%

48.9%

土台は自分で作り、仕上げをAIに

48.3%

23.0%

AIには任せない

21.5%

15.2%

ちょうど正反対の分布になりました。学生の最多は「土台は自分で作り、仕上げをAIに任せる」48.3%。社会人の最多は「AIに土台を作らせ、仕上げは自分」48.9%です。

社会人はAIに書き出させて自分が仕上げたいと考え、学生は自分で書いてAIに直させている。「ほぼすべてAIに任せる」も社会人12.8%に対し学生3.3%と、学生のほうが慎重です。

ただしこの比較には注意が必要です。学生には「実際にどうしているか」を、社会人には「使うとしたらどうしたいか」を尋ねており、実態と願望を並べていることになります。社会人の48.9%は「そうしたい」であって「そうしている」ではありません。それでも、丸投げ願望は社会人のほうが強いという傾向は読み取れます。

4. 64.7%が最初のツールのまま——新モデルが出たら乗り換えるのは誰か

学生は新しいツールに次々と乗り換えている——そんなイメージがありますが、データは違いました。

学生の乗り換え行動

割合

最初に使ったツールからほぼ変えていない

64.7%

友人やSNSの評判をきっかけに乗り換えたことがある

15.5%

大学が提供するツールに合わせて変えた

12.3%

新しいモデル・機能が出るたびに乗り換えている

5.6%

料金をきっかけに変えたことがある

2.0%

約3分の2が、最初に使ったツールを使い続けています。 性能や評判をきっかけに乗り換えた経験がある学生は21.1%、モデルが出るたびに乗り換える層は5.6%にすぎません。

学生は自由にツールを選べる立場にありますが、その自由を積極的に行使しているわけではないというのが実態です。最初の1つが定着し、そのまま使い続ける。企業が乗り換えられないのは制約によるものですが、学生の場合は制約がないにもかかわらず動いていません。今回の調査では乗り換えない理由までは尋ねていないため断定はできませんが、慣れたツールを使い続ける慣性が働いていると考えられます。

これは採用や育成の観点では示唆的です。入社してくる学生は、特定のツールに最適化された使い方を持ち込んでくる可能性が高いということになります。

5. 大学の制限56.0%、会社の公式導入43.9%——統制の形が違う

環境の与えられ方も対照的でした。

学生から見た大学の対応(複数回答/分母300人)

大学の対応

割合

レポート等での利用に条件付きのルールがある

34.0%

一部の授業・課題では禁止されている

29.0%

特に何も示されていない

22.3%

授業でAIの活用が推奨・指導されている

13.3%

大学が有料の生成AIツール・アカウントを提供している

6.3%

全面的に禁止されている

5.3%

社会人から見た会社のルール(分母460人)

会社のルール

割合

全社的に公式導入され、利用が推奨されている

43.9%

会社が指定したツールに限り利用が認められている

14.1%

一部の部署・業務で公式に導入されている

13.5%

わからない

14.3%

明確なルールはなく、個人の判断に任されている

10.2%

利用は原則禁止されている

3.9%

会社の43.9%は「公式導入して推奨」しています。 一方で大学が有料ツールを提供・推奨しているのは18.0%(重複を除く)にとどまり、制限(条件付き・一部禁止・全面禁止のいずれか)を受けている学生は56.0%(重複を除く)にのぼります。

つまり、大学は「使ってよい範囲」を線引きし、会社は「これを使え」と配っている。どちらも統制ですが、方向が逆です。

学生はこの落差を、入社と同時に経験することになります。制限はされていたが自分で選んでいた環境から、支給されるが選べない環境へ。使えるツールが増える一方で、選択権は失われます。

6. まとめ:AIネイティブの入社にどう備えるか

2つの調査を並べて見えたのは、同じ生成AIをめぐる、まったく異なる2つの前提です。

選択権の所在が違う。 学生は自分で選び、社会人の50.2%は選べません。この違いがツール分布の差として表れています。

委任の方向が逆。 学生は自分で書いてAIに仕上げさせ(48.3%)、社会人はAIに書かせて自分が仕上げたい(48.9%)。入社した学生に「AIに下書きさせて」と指示しても、噛み合わない可能性があります。

学生は乗り換えない。 64.7%が最初のツールを使い続けています。特定ツールに最適化された習慣を持ち込んでくる、と考えたほうが実態に近いでしょう。

備えとして考えられるのは、次の3点です。第一に、指定ツールを配って終わりにしないこと。学生が慣れているのはGeminiやChatGPTであり、Copilotではありません。第二に、「どこまで任せてよいか」を明示すること。委任の作法が世代で逆を向いている以上、暗黙の期待は通じません。第三に、なぜそのツールなのかを説明すること。自分で選んできた世代にとって、理由のない指定は納得しにくいものです。

生成AIを使えること自体は、もはや新入社員の差別化要因ではありません。84.0%がすでに使っています。問われるのは、企業側が彼らの前提をどれだけ理解しているかです。

調査概要

学生調査

  • 調査名:学生のAI利用実態調査(2026年7月)
  • 調査対象:全国の大学生・大学院生
  • 有効回答数:300人(大学生258人/大学院生42人)
  • 年齢:18〜34歳(平均21.8歳)
  • 回収方式:自然回収。割付・ウェイトバックは行っていません

社会人調査(比較対象)

  • 調査名:大企業AI浸透・活用実態調査(2026年6月)
  • 調査対象:従業員1,000名以上の企業・団体に勤務する社会人(経営者・役員/会社員/公務員)
  • 有効回答数:460人(5,000名以上243人/1,000〜4,999名217人)
  • 回収方式:自然回収。割付・ウェイトバックは行っていません

いずれも株式会社データインサイトによる自社調査(インターネット調査、ユニーリサーチにて配信)です。

比較にあたっての重要な注記

  • 2つの調査は別配信・別サンプルです。同一の回答者を追跡したものではなく、個人単位で接続することはできません。本記事の比較は、集計結果を並べた参考比較としてお読みください。
  • 分母の取り方が異なります。 学生側のツール利用率・料金プラン・乗り換えは生成AIの利用者252人が分母、社会人側のツール利用率は全回答者460人が分母です。この差により、学生側の数値が相対的に高く出ています。
  • 文書作成の委任度について、学生には「実際の作り方」を、社会人には「使うとしたらの理想形」を尋ねています。実態と願望を並べた比較であり、同じ性質の数値ではありません。
  • 学生調査では、生成AIの利用に関する設問で分岐が設定されなかったため、集計時に利用者・非利用者を条件で絞り込んでいます。

学生調査の回収サンプル属性

  • 専攻:文系49.7%/理系25.7%/医歯薬・看護・保健系14.0%/その他10.7%
  • 学年:学部1年12.7%/2年15.7%/3年22.0%/4年30.7%/5年以上5.3%/修士1年4.3%/修士2年6.3%/博士1.3%/その他1.7%
  • 大学:難関国立大学11.0%/早慶上理5.7%/MARCH・関関同立12.7%/その他の国公立16.0%/その他の私立44.0%/答えたくない10.7%

AIネイティブ世代の受け入れを考えている方へ

データインサイトは、AI Transformation(AX)を専門とするコンサルティングファームです。本調査のように独自の一次データを取得・分析しながら、企業の生成AI活用を設計から定着まで支援しています。

自社が指定しているツールは、入ってくる世代が使ってきたものと合っているか。どこまでAIに任せてよいかを、言葉にして示せているか。AI活用の現在地を整理し、次の一手を設計したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。

本調査データの引用について:出典を「データインサイト調べ」と明記いただければ、記事内の数値・図表をご利用いただけます。

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